薬剤師向け 災害対策情報サイト

人も地球も健康に|Yakult

薬剤師のための防災対策 〜薬局における平時の準備〜

お役立ち情報

更新日:2019.03.27

東日本大震災では、交通網や通信網の寸断、大規模な停電や断水などライフラインの崩壊、原発事故による風評被害、燃料不足などにより十分な医療の提供が困難ななか、薬剤師の献身的な医療支援活動が行われた。津波などの水害時には、多くの避難者が常用薬を必要としており、限られた医薬品のなか、薬剤師の専門性や避難者との綿密なヒアリングから代替薬や処方提案を行い、災害を意識した服薬指導が高く評価された。その他、薬剤師が果たすべき役割は、医薬品等の支援物資の仕分けと管理、救護所・避難所等への薬剤の配送、避難所等の衛生管理など通常の薬剤師業務の枠組みを超え多岐にわたった。

このように、災害時に医療チームの一員として薬剤師が果たせる役割は大きい。そのためには、災害の状況により臨機応変な対応を実行し、どのような状況下でも薬剤師職能が最大限発揮できるよう平時からの準備が必要である。

平時に薬局が準備しておくべきこと

超高齢社会による慢性疾患の増加と在宅医療の普及などの社会的背景を受けて、薬局自らが被災した場合においても、地域医療を担う一員としての役割が求められている。また、医薬分業により、災害時の薬局業務の継続は災害時の医療機能の確保に不可欠といえる。

本稿では、地域医療の担い手として薬局が早期に復旧し業務を継続することが重要と考え、平時にできる準備を解説した。

情報・連絡手段

災害時には情報が命綱となる。固定電話や携帯電話がつながらない状況も考え、複数の手段(衛星携帯電話、固定電話、FAX、タブレット型端末、スマートフォンなど)を確保することが重要である。

高齢者・障害者などの災害弱者となる在宅患者、透析・在宅酸素など特別の治療を受けている患者、服薬継続が必要な患者(インスリン、心疾患治療薬、抗HIV薬など)をリスト化することも非常に有効である。これらの患者情報等は必ずバックアップデータを作成し、震災等で破損する可能性が低い場所へ保管することも必要である。

従事者については、災害時の連絡先一覧(携帯電話番号、メールアドレス)等を周知し、災害時の連絡方法や集合場所、休日・時間外に災害が発生した場合に緊急参集する者を決定するなど、災害時の対応を決めておく。

電気、燃料

東日本大震災では、ガソリンなどの燃料不足が起きた。在宅患者や避難所の巡回のために、車のガソリンを普段から満タン状態にしておく、ガソリン携行缶を準備する、近隣のガソリンスタンドと優先供給のための協定を結ぶなどを検討する。なお、ガソリンの備蓄については、総務省令、各自治体の条例で保管方法、保管できる量などが定められており、使用の際には、基準を満たした金属製の容器(写真)を使用するなど十分な注意が必要がある。燃料を必要とせず小回りの利く自転車などが有効な場合もある。

また、停電に備えて、自家発電機を購入することが望ましいが、困難な場合は停電時でも調剤を継続するための対策を検討する必要がある。懐中電灯や上皿天秤、レセコンの代わりの紙の書式の用意が考えられる。

ガソリン携行缶の一例
ガソリン携行缶の一例。試験確認証が張られているものを使用する必要がある。
詳しい使用方法については、取扱い説明書をご参照。

備蓄医薬品の選定、リスト作成

医薬品の備蓄につては、最低3日分が必要だとされている。医薬品の購入は平時と同様、医薬品卸より購入することになるが、発災から1週間程度は災害拠点病院等への供給が優先されることがある。そのため、平時より医薬品卸と協議し、緊急時の配送体制および通信手段が遮断した際の対応を確認しておく必要がある。

備蓄医薬品の選定については、薬剤師会等の災害マニュアルに記載があるため参照されたい。

防災備蓄の準備

薬局が業務を継続するためには、従事者の最低限の生活も守る必要がある。自立して3~4日間過ごせる備蓄が必要である。日本薬剤師会の災害対策マニュアルに、備えるべき防災用品等リストが掲載されている。飲料水、配水車からの給水の受け入れるための容器(ポリタンク等)を常備する必要がある。

非常用品持ち出し品・避難・救助活動

患者教育・お薬手帳の普及活動

近年の被災地における医療支援活動では、限られた医薬品のなかでの処方提案が重要な役割であった。薬歴や既往歴、自分が服用していた処方薬が分からなくなった被災者に対しては、薬剤師が面談にて情報収集した。これらの情報を収集するうえでお薬手帳は重要なツールであり、お薬手帳から服薬状況等を迅速に収集できれば、その後診療までの時間が大幅に削減できる。また、短期間で入れ替わる災害時の医療チームにおいて、医療情報を集積・共有する媒体として有用であったことが報告されている。

平時より、ポスターの掲示や服薬指導の際にお薬手帳の重要性について説明し、お薬手帳の普及を継続的に行い、患者が自ら服薬管理を行うことを推奨することが重要である。

災害時もいつものお薬をスムーズ処方
啓発ポスターの一例。

BCP(事業継続計画)の策定、災害マニュアルの把握

医薬分業が定着した現在、災害時に薬局が業務を継続することは、災害時の医療機能の確保に不可欠といえる。そのため、災害によって薬局自体が物的・人的被害を受けても、業務を継続・再開し、災害により増加する患者に対応できるようにする必要がある。

災害対応は発生した地域や災害の規模、発生の時期(季節)、場所、時間帯等により異なることを認識し、ひとつのマニュアルに固執することは適当ではない。状況に即した創意工夫が必要である。

【参考文献】
平成23年度厚生労働科学研究「薬局及び薬剤師に関する 災害対策マニュアルの策定に関する研究」研究班 報告書、薬剤師のための災害対策マニュアル、
https://www.nichiyaku.or.jp/activities/disaster/manual.html(2019年3月27日閲覧)
東京都、
~災害時の薬局業務運営の手引き ~薬局BCP・地域連携の指針~、http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/kyuukyuu/saigai/yakkyokubcp.html (2019年3月27日閲覧)
日経ドラッグインフォメーション 東日本大震災取材班、ドキュメント東日本大震災 そのとき薬剤師は医療チームの要になった、 日経BP社、
2011年
日本薬剤師会、災害医療における薬剤師の役割―阪神・淡路大震災の記録、薬事日報社、1996年
半田智子ほか、医薬品需要の動向からみた被災地に必要な医薬品情報、昭和大学薬学雑誌、2: 2; 159、2011
大原宏司ほか、病院薬剤部における東日本震災後の防災対策、日本病院薬剤師会雑誌、52: 1; 53-58、2016

お役立ち情報一覧へ戻る