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薬剤師のための災害対策法制の基礎知識 〜災害対策基本法、災害救助法を中心に〜

お役立ち情報

更新日:2021.06.28

画像:赤羽根 秀宜 先生
中外合同法律事務所 
薬事・ヘルスケア・医療グループ
赤羽根 秀宜 先生

1997年 帝京大学薬学部卒業後、薬剤師として薬局勤務。その後、2008年 東海大学法科大学院卒業。2009年より弁護士登録(第二東京弁護士会)中外合同法律事務所所属。医療・薬事・健康・介護にかかわるビジネスや、薬局・医療機関等の業務に関し、法的支援を行っている。

災害対策に関する法律の概要

 日本では、5000人を超える死者・行方不明者を出した「伊勢湾台風」を契機として、1961(昭和36)年に、防災行政の基本となる災害対策基本法が定められました。

 災害対策基本法は、主に国・都道府県・市町村の責務や権限を定めるものであり、①防災に関する責務の明確化、②総合的防災行政の整備、③計画的防災行政の整備、④災害対策の推進、⑤激甚災害に対処する財政援助等、⑥災害緊急事態に対する措置が規定されており、平時における防災計画の作成から、発災後の応急対策、復旧・復興期における財政・金融措置に至るまで、災害対策の基本を網羅的にカバーした法律です。

災害対策基本法

 この基本法をベースとしたうえで、さらに「地震・津波」「火山」「風水害」といった災害の類型ごとに、あるいは、「予防」「応急」「復旧・復興」といった災害対策のフェーズごとに、個別の法律が定められています。

主な災害対策関係法律の類型別整理表

画像:主な災害対策関係法律の類型別整理表
内閣府、令和3年版 防災白書、附属資料27、主な災害対策関係法律の類型別整理表

災害救助法と薬剤師業務

災害救助法の概要

 災害救助法は、災害が発生した際に、応急的に必要な救助を行い、被災者の保護と社会の秩序の保全を図ることを目的とした法律です(同法1条)。2021年3月の改正により、非常災害等が発生するおそれがある段階においても災害救助法が適用されることとなりました。

 災害によって、市町村等の人口に応じた一定数以上の住家の滅失(全壊)がある場合(同法施行令1条1項1号~3号)や、多数の者が生命または身体に危害を受け、または受けるおそれが生じた場合であって、避難して継続的に救助を必要とする場合等(同法施行令1条1項4号)に適用されます。あらかじめどのような場合に法が適用されるか、確認しておくことが必要です。

 災害救助法が適用されると、都道府県知事は、必要に応じて、災害救助法に基づいて避難所や救護所を設置し、医療サービスを提供することになりますので(同法4条1項1号・4号)、薬剤師としては、調剤・服薬指導や医師や看護師等への情報提供等に備えておくべきでしょう。

 災害救助法は、特に必要があると認めるとき、都道府県知事等は薬剤師を救助に関する業務に従事させることができます(従事命令。同法7条1項・3項、同法施行令4条1号)。もし救助に関する業務に従事したために負傷・死亡等した場合には、療養扶助金、休業扶助金、障害扶助金、遺族扶助金等が支給されます(同法12条、同法施行令7条)。

 災害救助法では救助の種類として、①避難所の設置、②応急仮設住宅の供与、③炊き出しその他による食品の給与、④飲料水の供給、⑤被服、寝具その他生活必需品の給与・貸与、⑥医療・助産、⑦被災者の救出、⑧住宅の応急修理、⑨学用品の給与、⑩埋葬、⑪死体の捜索・処理、⑫障害物の除去が規定されています。

災害救助法が規定している医療

 災害救助法が規定している医療の範囲は、①診療、②薬剤又は治療材料の支給、③処置、手術、その他の治療及び施術、④病院又は診療所への収容、⑤看護であり、原則、救護班により行うことされていますが、やむを得ない場合は、病院又は診療所において実施できるとされています。

災害救助法が規定している医療の概要

画像:災害救助法が規定している医療の概要

災害処方箋

 災害処方箋とは、日本赤十字社の救護班やDMAT(災害派遣医療チーム)、JMAT(日本医師会による災害医療チーム)といったボランティアが、災害救助法に基づき、救護所など保険医療機関以外の場所で診療を行った際に交付する処方箋です。

 災害処方箋は保険診療として取り扱うことはできませんので、費用は災害救助法が適用された地方自治体に請求することとなります。詳細は災害協定によって定められますが、患者負担がないケースがほとんどです。災害処方箋には、などの災害医療に係る処方箋である旨の記号が記載されています。災害救助法適用地域における保険処方箋と災害処方箋の相違点は、下表の通りです。

災害救助法適用地域における保険処方箋と災害処方箋の相違点

画像:災害救助法適用地域における保険処方箋と災害処方箋の相違点
事務連絡「災害救助法適用地域における「保険処方箋」と「災害処方箋」の相違点について(情報提供・更新)」、日本薬剤師会 医薬・保険課、令和元年10月24日

その他

 上記法の他、大規模な災害が発生したときには、被災地での医療活動を円滑に行い、被災者に適切な医療を提供するために法の解釈の周知のみならず、通常の法の解釈を越えるような運用に関する「通知・事務連絡」が厚生労働省より発出されます。詳細については、本サイトの「東日本大震災で発出された通知・事務連絡」を参照ください。

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